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by acine

ワダエミさん 講演 その1

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日本が誇る衣装デザイナーのワダエミさんの講演を聞きました!

何と言っても 張藝謀 チャン・イーモウ 
英雄 HERO での 色彩鮮やかで 何とも美しい衣装に
ものすごく感動すると共に 圧倒されました 
この映画自体大好きな映画で 好きすぎて
未だに感想 とてもまとめれない位・・・!

その他 ワダさんが衣装を担当された映画は
キラーウルフ 白髪魔女伝ピーター・グリーナウェイの枕草子 LOVERS を見ています

才能溢れ 世界的に活躍されていて
動向が常に気になる チャン・イーモウとのお仕事が続いてる
ワダさんのお話を生で聞けるチャンスなんてなかなかない
これは逃すわけにはいかない!



というわけで 今日は仕事を入れず
この講演がある倉敷まで行ってまいりました
迷いつつ ギリギリに到着で かなりあせりました

瀬戸内海にも程近い旧家
豪勢なお屋敷の大広間の畳&お座布団の上で お話を聞く
障子の隙間から 自然の風が通り 日本庭園の緑が覗く
外国の作品にも かならず日本製の生地やデザインを使うという
ワダさんにピッタリな 何とも風流なロケーションも贅沢でした

定員は200人くらい?
中学生くらいから老人まで 老若男女年齢もさまざまです
映画に興味があるのか 衣装に興味があるのか
ワダさんに興味があるのか 興味深いところ・・・

まずは挨拶から始まり
黒澤監督の”乱”の兵士の鎧下には 
ここ倉敷のストレッチデニムを使いました というご当地ネタから始まり・・・ 
倉敷は日本一のジーンズの産地らしいので このあたりもロケーションばっちり

スライドを見ながら 各映画の舞台の衣装の背景、
エピソード、暴露話(笑) を語りながら
1時間15分ほど ワダさんずっと喋りっぱなしです

覚えてる範囲で 出てきた映画や舞台名・・・
乱、夢、利休、竹取物語、枕草子、8 1/2の女たち
宗家の三姉妹、HERO、LOVERS、韓国の監督の作品(新作)
ベルリンやNYで上演されたオペラ 毛皮のマリーなど
*衣装のスライド解説は HEROのものまで

感心したのが 来年70歳を迎えるというワダさんですが
そのネタ全くアンチョコなし 全てスライドを見ながら スラスラと喋られます 
自分がデザインしたとはいえ
映画や舞台の背景 監督 キャスト名 当時の状況
そして その衣装のデザインの源 生地 注意したことなど
ものすごく しっかりと記憶されてます
このスライド話も 映画ファンとしては 全て大変興味深かったです

落ち着いた風貌に 上品な物腰
紺のスーツにお洒落なスカーフとシルバー?のイヤリングが素敵でした
喋り方も大変落ち着いておられるのだけど
言いたいことは しっかり言われます
*以下 ワダさんのトーク部分は太字にしています

ここ10年 日本の映画での仕事は 残念ながら一切ないんです
妬む方がおられるんでしょうか?全然お声がかからない
ただ 外国の方とは ご縁が続いてて 2009年まで
すでにスケジュールがつまっています・・・


日本が誇る 日本のデザイナーなのに 日本での仕事がない!?
これには 会場中のどよめきと驚き 私もかなりビックリです
ワダさんいわく 往年のハリウッドの名作やヨーロッパ映画は
しっかり衣装にこだわっています
最近では中華圏の映画も 衣装に大変力を入れている・・・

外国では コスチュームデザイナーは 社会的地位の高い仕事です
日本では 衣装デザインの仕事というのは 地位は低くて
クレジットにも出てこない スタイリストが集めた既製品で
よしという 監督、スタッフが多いということ
それでは 魅力的な映画にはなりません


映画においての衣装というものは
それを着る俳優さんの格 映画自体の格を上げる
そして映画に彩を添える
なので 私はTシャツ1枚でもデザインすべきだと思う
既製品ばかり着た俳優さんでは  
映画の世界へお客さんを引き込むことは出来ないと
思うんです 
(深く納得)

残念ながら 今の日本の映画界には 予算内で何とかする
という方向なので 映画界自体も伸びない・・・
そして 活躍の場がないから 衣装デザイナーは育たない
ワダさん以降の後継者はまったく育ってない・・・
とのこと

そして そういう衣装を作る アトリエも日本にはないんです
もちろん 優秀な織物工場や職人さん、生産地はあるのだけど
映画などで 大量に衣装を作らないといけない時
中国などだと そういう部門部門のプロの人材を
中国各地から 即時集めることができるんです


実際 HEROの頃に出来たらしい 
(ワダさんの)北京のアトリエは 当初20人だったけど 今は200人になりました
そういうアートを 伸ばしていこうという体制もパワーなども
今の日本には 残念ながらないんです


ちなみに日本映画 黒澤さんの乱では
アカデミー賞を頂いたけれど 全米で公開されたのは7館のみ
片やHEROは 全米3500館で公開され 2週連続興行成績も1位でした
そういう意味でも 日本のアート映画は アート性が高くても
なかなか受け入れてもらいにくい 興行成績も難しい状況です

中国映画はそういう点でも 今すごくパワーがあると思います
HEROは35億の予算でしたが 中国で封切られ
初日の興行だけで 40億入ってきました
私の衣装も 見てもらえる人の数が違うんですね


そして ワダさん自身・・・
いつも私は(世界中の仕事場へ)一人で出かけます
なので 皆さんも団体旅行はしないで下さい
お膳立てされてたら 何も自分で考えない 答えも出せない
一人で動いたら 考えるのも答えを出すのも自分
自分一人の意見、自分一人で行動できる人間にならないといけません 

どうも日本人は遠慮しがち 引いてしまうんですね~
お互い譲り合ったり 意見を言わなかったり・・・
そういう 意見を言える 自分で行動できる日本人が
少しでも増えてくれば 日本も少しは変わるかもしれません・・・
あと日本の中 狭い範囲の中で物事を判断してはダメ
もっと広い範囲で見れる日本人が増えると 
日本社会も変わってくるかもしれません・・・
とも

私は言いたいことは言ってます
日本人が嫌がるお金のことも 仕事の依頼があれば
まずそういう条件面を 一番に話します
アメリカ、ヨーロッパ、中国 どこもそうです
だけど 日本ではそういう話はしにくいのか後回し
だけど 私は最初にするから きっと嫌がられるんですね


素晴らしい衣装やその解説もさることながら
閉鎖的で後ずさりしてる 日本の映画界・社会を憂慮され
だから 外国で私は仕事する という結論を出されたように感じました

残念ながら 今の日本には そんなワダさんの度量や
その類まれな才能を生かせる土壌がない 
そういう才能に投資する財力・人材もいない
いい映画を作ろうと気負いさえ 尻つぼみになっている気がしました
それは 皮肉であり 悲しいけれど
ワダさんには 自由でそのまんまのワダさんを受け入れてくれる
外国の水の方が 合っているようにも思えます

私は 外国に行っても観光には全く興味ありません
行くのはロケ地、スタジオ、アトリエ、劇場など 仕事場だけ
国が変わっても 行く場所は何ら変わりません
 とのこと
彼女にとって 国境はあまり関係なさそうです

だけど 京都生まれのワダさん
やっぱり常に 日本の生地を使うと言われていたので
そういう伝統も大事にしつつ 言いたいことはハッキリと言う姿勢

日本人がこれから向かっていかないといけない方向
これからの日本人が理想としないといけないカタチ
そんな生き方を自然に体現してる
ワダさんの姿勢は凄いなぁと感心するばかり・・・

私の仕事のポリシーは 同じことはしない
前やった映画 ○○風でお願いします なんて仕事は受けません
新しいこと やったことないことを 常にやっていきたい


その素晴らしい才能とともに お話の全て 感嘆するばかりでした

あまりにも長くなったので 次回へ続く・・・
ちょっと驚くかもですよー(笑)!

※言い回し等 実際の表現とは違う部分もあるかもですが
  覚えてる限りで こんなお話をされてたということを書いてます
by acine | 2006-10-22 20:07 | cosa cinema シネマごと