2007年 11月 13日
三峡好人 長江哀歌〈エレジー) ’06 中国

ポスターの通り ’06年ベネチア国際映画祭で
金獅子賞(グランプリ)を取った作品
三峡ダム建設で沈み行く街を舞台に そこにやってきた男・女
そこに暮らす人に焦点を当て 現代中国も映し出す文学系映画
ストーリー:eiga.com
一言で言うと・・・渋い そして地味な映画だ
美男美女が出るわけではまったくない
娘に会いたいがために家を出た妻を捜す主人公の中年男は
いつも上半身は裸かランニング 下半身だってズボンかパンツだ
そして 夢のあるストーリーでも ハラハラドキドキするストーリーでもない
時代や国に翻弄されながらも 地道に生きる人々の姿を淡々と描いた映画
取り壊しの決まった建物を黙々と壊す 日焼けで黒光りする上半身裸の男達
安宿を経営する老人 いなくなった妻と娘を探す男
そして旦那を探す女 チョウ・ユンファ気取りの若い男
兄の借金を返すために 働く主人公の元妻・・・
映し出されるのは そんな普通の人々
どちらかというと慎ましく生きる 底辺に近い人たちの姿
船でついた早々 商売気のある人間が 主人公の男を取り囲む
何でも ○元!○元!という 商魂逞しさにはちょっと唖然とする
レトロでいて 携帯電話を使いこなす 劇中の人々
昭和初期(って知らないけど)を思わすような バラック的な住みか
大の男がギューギュー詰めになって 麺をすする場面・・・
突然 大人びた流行歌(まさにそういう雰囲気)を歌いだす子供
妙にシュールなシーンも交えつつ 演技というより
その辺の人々を描いたドキュメントっぽい作りがする
中華圏らしい ご飯をかきこむシーンも一杯
えげつなく 健気に そしてマジメに 人生を恨まず
長江という大自然と向き合い共存する人々の生活・・・
人生も生活も上手くいかなくとも 淡々と地道に生きていく姿が
印象的だった そして豊かな水を蓄える美しい長江の風景も・・・
こうして 人間は生きていく 生きていかねばいけない・・・という事実
もうすぐ沈み行く街 その悠久の時を刻む長江と共に・・・
そして 劇中あちこちで目にした
第三期工事での水位のラインと数字も印象的だった
自分が今住んでるそこがいずれ川の底へ沈むなんて
なかなか想像がつかない世界だ・・・
たまにはこんな静かで 叙情的な時間が流れる映画もいい
地味だけど 不思議と飽きなかった
監督の賈樟柯 ジャ・ジャンクーは まだ30代後半というのが嘘のような
落ち着き払った 名匠のような映画を今回撮ったのには驚いた
彼の前作 世界 を たまたま私は見てるんだけど
この時は まだまだ発展途上だなという感じが否めなかったのに
この短期間で この達者な作りこみぶり・・・えらい成長振りにビックリした
今日の映画:75点
廃墟となったマンションの部屋にジェイ・チョウのポスターが貼ってあったり
TVの画面に挽歌のチョウ・ユンファの姿は 中華圏ファンには楽しかった(笑)
by acine
| 2007-11-13 17:34
| China 中国映画