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by acine

SALVADOR  (PUIG ANTICH)  サルバドールの朝  ’06 スペイン

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いやいや これまた骨太のラテン系だ

スペイン映画というより カタルーニャ〈バルセロナが州都)ならではの
独特の地域性やその性質がよく出た映画だと思う
スペインであって スペインでないバルセロナ同様
スペイン映画であって スペイン映画ではない 
ラテンの濃さとマジメさ 独特の立ち位置の映画かもしれない

台詞も 実際 半分がカタラン(カタルーニャ語) 
半分がカステジャーノ(いわゆるスペイン語)という
いかにもカタルーニャらしい 言葉遣いだった
あそこまで自分達の言葉まで抑圧されてたら 
自由になったら カタルーニャ語が第一というのが わかるような気がした
しっかし カタルーニャ語はやっぱり難解だわ さっぱり理解不可能
この前見た イタリア語の方がよっぽど スペイン語と似てる
 *理解可能な範囲に限る・笑*

大・大・大好きな街 バルセロナが舞台ということで 絶対見なくては!な私  
硬派な仕上がりなんだろうなと思ってたけど
ほぼそれは当ってたけど へーぇ!な意外なシーンもあったりしたけど
いやはや不覚にも 何箇所かで涙が出ました
詳しくは:アムネスティ

冒頭の事件 もう一体誰が誰やら どっちが悪者なのか
サッパリわからないのだけど サルバドールは銃弾を打ち込まれ
警察官を殺し 牢屋に入れられ 裁判を待つ身となる

全く過ごしてる時間も 時代も 国も違うし
そういう行動に出なくてよい国や時代に生まれたけど
こういう映画を見てると いざ自分だったらどうするか?
どう生きるだろうか? とついつい考えてしまう
今年は 視点は違えど こういう反体制系・レジスタンス系
政治的巻き込まれ系 凄くいい映画が多かったと思う
麦の穂をゆらす風 パラダイス・ナウ パンズ・ラビリンス
グアンタナモ 僕たちが見た真実 ラストキング・オブ・スコットランド

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主人公サルバドールを演じたのが ダニエル・ブリュール
グッバイ、レーニン!で彼を見てて てっきりドイツ人だと思ってた私(国籍はそうらしい) 
スペイン映画なのに 何で彼が出るんだろう?と 不思議に思っていたら・・・
実はバルセロナ生まれドイツ育ち ドイツ人とスペイン人のハーフだったのね
そして ドイツ語、スペイン語のバイリンガル、英語もフランス語も堪能だとか! 
(映画見てたら カタルーニャ語も堪能そう)
本名: Daniel César Martín Brühl González Domingo  
意外にも スペイン色濃い名前だったのね

この映画での カールおじさんか熊軍団みたいな 濃い濃いいかにも
濃厚なテイストのラテンな男達に 囲まれてると 彼は毛色がやっぱり違う
ボンボンくさいというか 妙な生真面目さとのほほんさ・・・
そういう彼の持ち味が 何故か道を踏み違えてしまった
このサルバドールの役にピッタリだった 
それはバルセロナの持つ街の空気感とも重なる
バルセロナ生まれの彼には持ってこいの役だったんだろう

お肌があんまり綺麗じゃないのが 勿体ないけど 
彼が真摯に人生に向き合えば ニッコリ微笑めば
彼女も姉妹も弁護士も看守も 皆何故か彼のことをほおっておけなくなる

彼が死刑になるまでの原因は 正直全く共感できない
反体制と名のついただけの単なる強盗犯 単なるギャングじゃないか?!
そりゃ捕まって当然よ! と思いたくもなるんだけど
それが原因で 大きな時代の渦に巻き込まれ 
結局 死刑宣告を受けるくだりは 本当に気の毒になってくる

最初はうさんくさく思われていても 段々と周りの人間を引き込む・・・
ダニエルののほほんとしたボンボン的存在感は 
そんな見てる側の矛盾も段々帳消しし 共感させてしまう底力があるから凄い
現実的なドイツ・スペイン版トビー・マグワイアって感じもする
そして どこかユアンも思わせる雰囲気 

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やはり思想で囚われ死刑宣告から恩赦で生き返った父親は
すっかり人が変わってしまい廃人のようで 息子を思いやる余裕がない
そんな父に あなたの息子でよかったと手紙を書くサルバドール
そして活動に熱中するあまり 彼女からも愛想をつかされる 

そんな囚われた身のサルバドールを心配するのは彼の4人の姉妹
この姉妹の弟・兄サルバドールに対する気持ち
そしてサルバドールが女姉妹に対する気持ち これがたまらない
歳の近い姉妹たち そして末っ子の妹に対する思いやり
自分と血のつながったきょうだいが死刑になる?! 想像を絶する世界
控え室でサルバドールと姉妹達が4人で手をつなぎあわせるシーン・・・
私には弟はいないけど 思わず・・・涙! 

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そして 登場が楽しみだった レオナルド・スバラグリア!
ご覧のとおり これまたカールおじさん状態で 刑務所の看守役
パンズ・ラビリンスの大尉のように とことん卑劣なヤツかと思いきや
(そういうのも見てみたい) 姉妹とサルバドールが面会で話す時も
 ”カタランを使うな!カステジャーノを使え!カブロン!” なんて
憎憎しげに言ってたくせに・・・
気がつけば あれ?ストーカー? あれ?一緒にバスケやってる?
○への手紙を読み 果ては すっかり囚人サルバドールに共感してしまって
感情移入してしまうくだりが ちょっと笑えたりして・・・ 
こういう妙な子供っぽさや 単刀直入さもスペインらしくていい(笑) 
何故か和み系のほっとする妙ちきりんなヒール役 スバちゃんでした
*レオナルド・スバラグリア ユートピア

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個人的には楽しみにしてた ネチっこそうなルックスとは裏腹に
スバちゃんが意外に平和な役だったので ちょっと物足りなかった反面
弁護士を演じた トリスタン・ウジョア 彼は今回凄くよかった!
登場してから だいぶたって これってもしかして彼だわ!と気がついたけど
最初はサルバドールに理解できないと言ってたくせに
接するうちに なんとかサルバドールを助けようとする
彼の職業人そして人間としての純粋な気持ち 彼の行動・・・
これは重要な役だったと思う 彼とサルバドールのシーンも泣けた・・・こりゃ名演!
*トリスタン・ウジョア ルシアとsex オープン・ユア・アイズ 

レオノール・ワトリングも出てたけど 余り重要な役ではなかったかな?

70年代が舞台ということで レトロなファッションに車
それにあわせたザラついたフィルム どこか突き放したようなバルセロナの街並み
音楽も凄くよかったし 映像もスタイリッシュでカッコよかった

宣告~執行に至るまでのシーンも まわりではそういう行動を起こすのか?
そして 作業人+執行人登場 その全ての過程にもかなり驚いた
思わず息をする間もない つばを飲み込む終盤だった

原因は何であれ 過程が大事 
ずしっとした骨太さと ぴしっとした真摯さが光る映画だった
骨太ラテン系 繊細で力強い!

今日の映画:82点
by acine | 2007-11-25 23:03 | España  スペイン映画