2008年 05月 05日
There Will Be Blood ゼア・ウィル・ビー・ブラッド ’07 アメリカ

これは 年に何度かお目にかかる 本気印の映画
事前情報は ニューメキシコを舞台に 石油を発掘する野心家の男
そして 宣教師の男が絡む・・・ ”ブギー・ナイツ”も”マグノリア”も見てる
ポール・トーマス・アンダーソン作品 キャスト陣がこの人とこの人・・・くらい
なんとなく シリアスで 息がつまるようなマジメな映画かな~?と
思っていたら いい意味で予想が外れた感じ ドラマが見事!
その緩急見事なテンポ メリハリが利いて
テンションも高く 各々のキャスト陣の素晴らしい演技
ストーリー運びの上手さ 演出の上手さ!映画らしい映画だな
一歩間違えば 単なる退屈な映画になりかねない地味な題材を
ここまでエンターテイメント性高く グイグイと観客を引っ張る力強さ
その思うようにいかない人生の歪み そして人間の強さと弱さ
そして 善と悪 強さと弱さ 宗教と無宗教 それらは実は紙一重
なんじゃないか?と思わせてしまう 圧倒的な説得力
オーソドックスながら おかしいよ・・・絶対匂うよこの展開 と思っていたら
ほぉ~!こう来るか!連続 そのストーリーテラーぶりが見事な映画でした
決して 後味いいわけではないんだけど
ノーカントリー のような一時も目が離せないタイプの映画
しかし 冒頭の古い時代からの 石油掘りの風景・・・
時代と共に 成功と共に 手作業から だんだんと大掛かりになってきて
まさに金脈を掘り当てる・・・とはこのことよ パイプラインとはこのことよ・・・
という感じで 石油を探して掘って一攫千金なのはいいけど
本当に3K(死語)な仕事だ それ故に危険で生死が行き交う毎日
この映画でも人生をの歯車が狂い始める人があちこちに・・・
そんな人たちがこの映画の語り部や鍵になる・・・

以下 少々ネタバレあり
いわくつきの洗礼を受けたものの 神も人も信じず
自分が神と信じて疑わぬ 自信過剰でやり手
自分の野望を優先 そんな男を演じたダニエル・デイ=ルイス
この人も縁がなくて なーんと初見でしたが・・・
父性も感じさせつつ 人間味もある男なので 魅力的なんだけど
非情な部分や 誰も信用できない本質を併せ持つ男 圧巻でした!
テンション高く 間違っていようが 誰も彼に口出しできないのだ
そんな男でもエレガントさが漂っている このあたり何ともイギリス男
アカデミー主演男優賞・・・これは深く納得!
そんな父親と子供ながら しっかりと家内工業
頼れるビジネスパートナーとして働く息子H.W
えぇ~? こんなのあり? まさに帝王学!
この二人の風景が 風変わりながら 人間的でもあり
非情でもあり そういえばこの人が親?と
冒頭での疑問が ラストと結びつく 無垢で言葉を
心に一杯隠し持っていそうな子役の子・・・達者でした

そして 植物的で キューピーみたいな顔した なで肩のポール・ダノ
キング 罪の王 リトル・ミス・サンシャイン どっちでも
なかなかクセのある印象に残る演技していたので
個人的には ダニエル・デイ・ルイスと真っ向勝負してるという
彼の演技が楽しみだったんだけど・・・ 彼もキテました!
何かに憑りつかれたかのような一見まともそうで
とんでもないイカレた田舎町のカリスマ宣教師
もしくは天才ペテン演技か・・・信者も気持ち悪かったけど
無垢な瞳の中の狂気と弱さ 情けない役だったけど上手かったなぁ
あぁ・・・ こんなことしてたら バチ当るかも・・・というシーンでは やっぱりね
順風満帆かと思っていたら そうは問屋がおろさず しっぺ返しが来る・・・
あぁ・・・コイツは怪しいよ・・・と思っていたら やっぱりね!となったり
その見せ方が キッチリお膳立てされてる予定調和の中なのに その驚き!
この映画は そういう見せ方が本当に上手い
結局 信じるからと言って 人間が皆救われるわけではない
自分を神と信じていた人間も しょせん神になれるわけがない
何かを優先すると 何かに歪みが出来る・・・
上り調子の古きよき時代のアメリカの荒野での刹那感と狂気
なんとも 見応えたっぷりの映画だった
今日の映画:85点
by acine
| 2008-05-05 00:13
| Estados Unidos 米映画