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by acine

it's a free world...  この自由な世界で ’07 イギリス・イタリア・ドイツ・スペイン

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社会派 ケン・ローチの新作
昨年のヴェネチア映画祭脚本賞受賞作
詳しく:東京美術通信

背景などは↑を見ていただくとして・・・

このタイトル通り 自由を謳歌するには・・・
自由がある程度約束された国では 搾取される人間が
知らず知らずのうちに 誕生してしまうということ

悪循環とわかっていながら 雇う側も雇われる側も
甘い汁を吸いつつ 吸われつつ 悪循環を断ち切れない現実
それを断ち切ってしまうと 世の中が回らないこの世界
ヘヴィだけど まるでドキュメントを見ているようにリアルだった

丁度 何日か前に 日本(西船橋が舞台だった)の日雇い派遣労働者
とその派遣会社を追ったルポをたまたまTVで見ていて
朝 駐車場に集る若者 そして点呼を受け 各バンやバスに乗って
行き先も仕事内容も時給も曖昧なまま 派遣先へ向かう・・・

まるで そのデジャブーのような風景が目の前に広がっていた
毎朝 仕事に群がる労働者 それをさばく紹介会社の女 
単に舞台をロンドンに変えて 労働者を東欧・南米・中近東 
先進国でない国の出身者に変え 雇う側がパワフルだけど
非力なシングルマザーの女に変わっただけ・・・という感じだった
だけど 不法滞在などが絡んでいるだけ より状況はヘヴィだ

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地道なケン・ローチ作ということで 地味なキャスト陣なんだろうな~と
いう予想から外れて 主人公アンジーはシングルマザーながら
凄くパワフルで そして肉感的な女で かなりイケイケ系
女であることも上手く利用しつつ事業を始め・・・だったので 
かなり意表をつかれた なんとなくもっと地味~な女かと思っていたので・・・

だけど そもそも彼女が職を追われた理由というのも不条理で
どうのこうの言ってもこの世の中は 未だ男社会ということ
だから 彼女が女を利用して この道にずぶずぶと吸い込まれて
いったことも 決して責められないことだと思う
だけど 労働許可を持った人を紹介するという行為から
段々逸脱していき 不法滞在者に偽造パスポートを持たせて・・・
の辺りから道は狂っていった そして事件が彼女を襲う

だけど 劇中の台詞 不法滞在者の労働条件 身の安全がいかに水物か・・・
不法滞在者の息子と比べて あんたの息子はそんなにえらいのか?!
no と答えるアンジー 

余りにも逸脱した行動をする彼女を見て もうついていけないと
アンジーのもとを離れた仕事のパートナーであり親友のローズ

彼女は神様でも マザー・テレサでもない 
そして魔女でもない 単なる一人の人間でしかない
人助けをしてると言いつつ 自分と息子の為にはお金を稼がないといけない
自分も生活していくためには なかなかこの道から抜け出せない 
そして そんな彼女を頼っていかないといけない人間もどんどん出てくる
一人で彼女は新たな収入源確保のためにウクライナへ向かう・・・

この悪循環は切れることはないんだろうなぁ・・・
その悪循環がないと その国の人間は暮らせないんだろうか?
と思ってしまう 今の時点では解決法が何も見つからないような気がした

自由な世界には 壁も隔てずに 不自由な世界が存在する

とても地に足のついた ヘヴィでパワフルな映画だった

今日の映画:80点
by acine | 2008-09-11 22:19 | Inglaterra イギリス映画